(インタビュー 2010.12)
セロテープハイ、ってあるんですよ(笑)
――この2匹の犬、かわいいですね!
この2つはね、有名なんですよ。テレビにも何度か出演してますし。タレント犬ですね(笑)。
――この仏像は、素材の関係なのかもしれないですけど、いわゆる仏像と違って温かい感じがしますね。ありがたくて近寄りがたいっていう感じじゃなくて、なんか人間ぽい感じがします、すごく。
それはすごく嬉しい感想ですね。僕が作品制作のとき唯一こだわってるのは、温かさを伝えたい、見た人に感動して欲しいってことなので。絵とか作品って、本当に人柄が出るものなんで。
――瀬畑さんの作品は具象から抽象まで幅が広いですけど、こういった抽象的作品の造形インスピレーションはどんなところから得ているんですか?
本当に何もないんですよ。心をなるべくニュートラルに、何もない状態にして作ってるつもりなんですけど、なんか化石みたいとか、恐竜っぽいって言われるんです。
人間って、生まれ持っての造形感覚とか記憶っていうのが必ずあると思うんですよね、色、色彩もそうですし。僕はもちろん化石とか恐竜、実際には見たことないですよね。ないのにそれっぽいっていうことは、やっぱり突き詰めていくと、深い記憶になって、海に近いというか、水の中から出てくるものに近くなっちゃうのかな。わかんないですけど。
――巻いてるうちにこの形のイメージが浮かんでくる感じなんでしょうか。
うーん、できてくるっていうか、あるんでしょうね、初めから多分、何かが。あるんですけどわからないんです、僕には。どこまでなにを作りたいのかもわからないし。だから本当にこういう高さ1.5メートル、重さは100kgぐらいもある大きな作品になると、作り終わった後、冷静になるとびっくりします。どういう心境で作ったのかなって(苦笑)。
――え、覚えてないんですか!
覚えてないです。マラソン選手はランナーズハイってなりますけど、それと似たような感じで、僕はセロテープハイ(笑)。その状況になるともうわかんないんですね。
作品は魂を伝える器。解釈は自由なんです
特に、僕の作品を初めて見る人からは「この抽象的なものはなにを表現しているんですか」ってよく聞かれるんですけど、正直、形なんて別になんでもいいんですよ。作品を通して僕の思想やコンセプト、つまりメッセージを伝えて、語り合うことが大事なので。これはただの、それを伝えるための器というか。だから別に形についてはどうとらえてもらってもいいです。
――そう言われると、アートって、別に縁遠いものじゃないんだって気がしてきました。
遠いものじゃないですよ。普通に、極めて普通にあるものなんです。人の人生とか、人が心の中で思ってることを、どんな形で表現するかはその人次第。それをどう感じるかも、本来は解釈を加えるべきものじゃなくて、受け取り手の自由ですしね。
――これがわからないからダメとか、そんなことじゃないんですね。
すごいかすごくないのか、いいのかわるいのか、感動するかしないかっていうのは、純粋に、ぱっと見たときのファーストインパクトでわかりますよね。もうそれだけだと思うんですよ。ぱっと見たときに感じないものをなんとか理解して感じる必要もないと思うし、この人は感じないけどこの人は感じるっていうことももちろんあるし。
――作品を見るとき、どうやって見てもらうと嬉しいとか、そんなのはありますか?
僕が展覧会の会場にいるときは、お客さんには可能な限り作品を触ってもらってますね。僕の作品って触って作っているものなんで、本来触るのが一番早いんですよ。作品は「魂を伝える器」なんだから、やっぱり持っていただくと一番、伝わる。ただ触ったり見たりして、わあすごいね、すごいなあ、そう言ってもらえるだけで、本当に僕はいいんですよね。
ただ勿論人数にもよりますし、一応美術作品なのでいつでもどなたにでも触ってもらってOKですよとは言えないのが現実ですが。
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